小説置場という名の駄文置場

額良が書いた文章などを置いております。 稚拙なものばかりですがご容赦を
とりあえず現在は楓戦記のみを公開しています
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「皆さんこんにちは,私の名前はキラと申します。
今から話す物語は、あなた方の知っているのとは別の私たちがいるメイプルストーリーの世界のお話。
そこにいる人々は、ひたすら強さを求めるようになってしまっていました。
そんな中での、一組の男女の出会いのお話。
私は未熟者なので、あまり上手には語れず、台本を読みあげるようになってしまうと思いますが…精一杯語ります。
もしよければ聴いてください。
それでは始めましょうか、物語を」


「一人だった少年と、孤独な少女」



ここは楓城夢幻回廊。
天守閣への来訪者を惑わす迷路であり、数多の忍びが潜みその者の命を狙う危険な場所である。
そんな中に一人、天守閣を目指しここを進む少年がいた。

当然、忍び達はこの招かれざる来訪者を排除しようと少年に襲い掛かった。

「御命頂戴!」

「覚悟!」

ある者は小太刀を、ある者は吹き矢を。次々と得物を構えて各々の攻撃を一斉に繰り出す忍び達。
だが少年はそんな忍び達には目もくれずにただ一言。

「邪魔」

そして、持っていた槍、「パルチザン」をひと振りした。
次の瞬間、襲い掛かっていた忍び達は全て倒れていた。

それでもしつこく次々と襲い掛かってくる忍者達。
だが、それをものともせず蹴散す。
彼の名は「流 博(ナガレ ハク)」
一介のダークナイトである。

「ふう、やっと着いた。」

天守閣に着くまでに多くの忍びの相手をしたにも関わらず、彼は少しも息を切らしていない。

(あの迷路は面倒な上に忍び達がしつこいんだよな~…。)

だが、彼は思ったより時間がかかってしまったことに対して、額を流れる汗を拭いながらため息をついた。

「さて、狩場は空いているかな・・・?」

そう言って彼はきょろきょろと辺りを見回した。
少し遠くの方に群がる忍び達が見える。

「ここは空いていない・・・と。次のチャンネル行くか」

彼はチャンネル移動をしようとするが、その前にある光景を見てしまった。

(あれ・・・一方的だな。)

狩りをしているはずのそこにいる人は、逆に忍び達に一方的に攻撃されていた。

(あのままじゃ危ないな…。)

博はそう思うと忍び達が群がっているところへと走った。









最初はただ軽い気持ちで来ただけだった。
通りがかった人達が楽勝で、とても経験値効率が良いと言っていたのを聞いたからだ。
だが、今更思い出せば、その人達は自分よりとても強そうな人達だった。
彼女、「ミーナ」は知らなかった。

(忍頭が、こんなに強いなんて…)

ミーナが天守閣一階に着いた瞬間に襲い掛かられ、防戦すること一時間。
少しずつ少しずつ体力を削り取られていった。

ついに攻撃する程の余力も削がれ、先程張った魔法の結界「マジックガード」も、そろそろ魔力切れと共に意味を成さなくなってしまう。

「キャッ!?」

そう思っていると、本当にマジックガードが切れてしまった。
忍頭の手がミーナを掴み上げる。
彼女を掴みあげた忍頭と目が合う。
鈍く光るその目は彼女を見てニヤついているように見え、それだけでミーナは背筋が凍る思いに襲われた。

(誰か・・・助けて!!)

恐怖のあまりミーナは目を閉じた。






















「間に合え!『ドラゴンバスター』!!」

誰かのスキルの永昌が聞こえたと思うと、ミーナを掴みあげていた手がなくなり、かわりに彼女は何かに抱き抱えられるような感覚を覚えた。

恐る恐るミーナは目を開けると、そこには彼女を抱き抱える博がいた。
彼はゆっくりミーナを降ろすと、向かってくる忍頭達に向かって行った。





「『ドラゴンスラッシャー』!」

博は迫ってくる忍頭達を片っ端から薙ぎ払い、確実にダメージを蓄積していった。

(・・・そろそろいいかな)

彼はそう思うとミーナの元に行った。

「伏せて」

少しまだ震えているミーナにそう言うと、博は槍で円を描いた。
空気中に描かれたそれは形となって、魔法陣を成した。

「唸れ、龍の咆哮!!『ドラゴンロア』」


魔法陣が左右に別れ、巨大な龍が出現する。
次の瞬間、龍は咆哮しその場にいた忍頭達は強烈な衝撃波に襲われた。
咆哮し終えた龍が消えるころ、その場に立っているのは博とミーナだけとなった。










(・・・すごい・・・。)

博が現れて忍頭達を蹴散らすまでの間、ミーナはずっと博の動きを見ていて思った。

「君、大丈夫?怪我はない?」

彼はミーナに彼しかけて来た。

「(わわ、話しかけて来た!?)あ、わ、わ、私は大丈夫です!」

別に慌てることなどなにもないはずなのに、彼女は慌てた。
だが、そんなことには構わず彼は話を続ける。

「そっか、ならよかった。
ところで、ここは君一人?
もしそうなら俺もここで一緒に狩らせてもらいたいんだけど」

「は、はい。どうぞ」

まだミーナは落ち着いていない。

「ありがとう、俺は博。流 博っていうんだ。」

博は簡単に自己紹介をするとすぐに体の向きを変えた。

「じゃあ、俺は向こうを狩るね。それじゃ。『ハイパーボディ』!」

博はミーナに補助呪文をかけるとまた沸いて来た忍頭を狩り始めた。

ミーナはしばらくきょとんとしていたが、そんな自分に気がついたのかハッとした。

(・・・いつまでも固まっていられない!)

そう思い、ミーナも狩り始めた。













(・・・なんか、大変そうだなぁ・・・。)

さっき助けて、今は必死になって狩っているミーナを見て、博は思った。
見たところ彼女はまだプリースト。
そんな彼女にとって忍頭はまだつらすぎる相手だ。

(あ、あぶない。)

ミーナがやられそうになる。
彼はそんな時にさりげなく「ラッシュ」で敵を跳ね飛ばしてフォローしていた。
彼女は少し動作が遅いというのか、どんくさいというのか…何となく動きがぎこちなかった。
何度も死にかけているせいもあるのかもしれない。
だがよくあれでプリーストになれたものだ、と彼は思う。

(…でも、一生懸命だよな)

そう、彼女はとりあえず一生懸命なのだ。
今まで博が一緒に狩ってきたプリーストやビショップは自分の身を第一に回復ばかりして経験値増幅魔法である「ホーリーシンボル」や能力上昇補助魔法の「ブレス」をかけなかったりして吸ってばかりの者ばかりだった。
だが彼女、ミーナは一度も補助魔法をかけ忘れていない、そしてあまり効きもしないのに忍頭に攻撃もしている。
効率はお世辞にもいいとは言えないありさまではあるのだが。

(…たまにはいいか。)

いつもなら自分のサポートに専念してくれと言って効率を優先させてしまう彼だったが、今回はそうしなかった。
彼自身、らしくないとは思いつつもけなげに頑張る彼女にそれをするのは忍びなかったのである。

そうしてお互いに集中して狩っていた。






















(…守ってくれてるのかな?)

ミーナは自分が危なくなるたびに常にタイミングよく博が「ラッシュ」で忍頭を跳ね飛ばしてくれているのに気がついていた。
それはいつも邪険に扱われていた彼女にとってはとてもうれしくもあり、また不安なものでもあった。

(…どんくさいと思われてる…よね…。)

苦戦して死にそうでいる自分に比べ、彼の狩りのなんと鮮やかなことか。
彼女は自分の力量不足に落胆してしまっていた。

(…せめて、補助はしっかりしなきゃ)

彼女はそう思い、補助魔法だけは切らさないようにしていた。
元々のあまり積極的ではない性格のせいであまり友人もいなく、人と一緒に狩るのは久しぶりだったが、最大限の注意を払った。
確実にダメージを蓄積していって、とどめを刺す。
自分にやれることはそれしかない、だけどしっかりやっていこう。
そう思い黙々と狩っていくミーナであった。















――LEVEL UP――

狩り始めてから数時間、不意にミーナの周りに緑の光が満ちてレベルアップを知らせる音が響く。

「おめー」

博は社交辞令ともいえる祝福の言葉を述べた。
それと同時に、区切りもいいので本日の狩りを終わりにしようと思った。

「俺はそろそろ狩りをやめるね、お疲れー」

そう言って博はその場から立ち去ろうとする。

「あ、ちょっと待ってください」

ミーナは立ち去ろうとする博を呼び止めると言った。

「あの、友達登録をしてくれませんか?」

そう言うミーナに博は言った。

「友録?言っとくけど俺は狩り友とかそういうのはやだよ?」

博は彼女の申し出について今回ので味をしめた彼女が彼をキープしようとしたのだと思ったのだ。

「いえ、そんなのではなくって…その…友達になってほしいんです。」

食い下がるミーナ。
その眼はおそらく嘘を言っていない…気がした。

「ん、わかった。じゃあ君の名前を教えてくれ。俺から君に送るから」

何で彼女が男である彼と友録したがるのかはわからなかったが、特にいやでもなかったので了承した。

「はい、私の名前は「ミーナ」です。これからよろしくお願いしますね!」

博が録を送った時、ミーナはとてもうれしそうにしていた。
彼にはなんで彼女がそんなに喜ぶのかもよくわからなかったが、何となく悪い気はしなかった。











その後も、事あるごとにミーナと博は一緒に行動した。
ある時は狩りに行ったり、あるときはイベントにいたり。
それまでは基本的に一人であまり人と一緒にいるのが好きではない博だったが、何故かミーナといるときだけは心が休まり、ミーナはミーナで博と一緒に狩りに行くたびにうれしそうにしていた。

そして、いつものように狩りをして、それが終わり休憩していた時のこと。

「あの…?博さん?」

「何?」

「この後あなたはどうします?」

「俺はこの後何も…。」

『こちらルーグ。おーい博、これからビシャスやるから集まれ。今日という今日は参加しろよ?』

唐突にギルドからの連絡がきた。

「…ない、はずだったんだけど」

「え?」

「いや、こっちの話。悪いけど俺はこの後ギルドのほうでビシャスがあるみたいだから、そっちに行くね。」

「あ…はい…。」

ミーナがさびしそうな顔をする。
博は少し悪い気がしたが、行こうとしる博。
しかし、そこに再びルーグの通信が入る。

『あーそれと君と一緒にいる…その声は女の子かな?その子もつれてきたまえ。なんだかさびしそうな声出してるしこちらとしては歓迎だから。』

「!?いつから聞いていた?」

どうやら彼は博達の会話を聞いていたようだ。

『ん~?いつって…そんなの覚えてないな』

「覚えてないくらい前!?人の会話を勝手に聞くなよ、てかどうやって聞いて…」

『僕の外部ハッキング能力を甘く見るな』

「勝手に人のプライベートを盗聴するな!!」

『ふふん』

ルーグの自慢げな声が聞こえる。
どうやら彼は博の通信回線に事あるごとにハッキングして盗聴していたようだ。

「…。」

『まぁまぁそう怒らずに、それじゃ現地集合ね、待ってるよ』

ルーグはそれだけ言うと通信を遮断した。

「…はぁ」

大きく溜息をつく博。

「あの…どうしたんですか?さっきからもめているようですが…」

ミーナが心配そうな顔で問う。

「ああ、いやね、ギルドのやつらが君もビシャスにどうかと言ってるんだけど…。どうする?来る?」

博は内心いきなりこんな申し出断られるだろうと思っていた。
しかし

「あ、はい!私行きます!」

ミーナの答えは即答でしかも博の予想とは逆のものだった。

「…え?」

「だから、行きます。連れて行ってください!」

こうして、ミーナは博と共にビシャスに行くこととなった。































「ようこそ、我らがギルド「ナイトオブダウン」のギルクエへ。僕はギルドマスターのルーグ、職はナイトロードだ。よろしくねミーナさん」

ルーグの差し伸べた手をおずおずと握るミーナ。
集合場所であるルディブリアムのスキンショップにつくとルーグとその他数人が既に待っていた。

「いや~それにしてもかわいいね、君、どうだい?このビシャスが終わったと一緒に食事でmグボアッ!?」

近くにいた髪の長い女性に軽く吹っ飛ばされていくルーグ。
そして壁に激突するとそのまま動かなくなってしまった。
女性の隣では顔に手をあててため息をつく知的そうな男性がいる。

「あったとたんにいきなりナンパしてんじゃねぇ!困ってるだろうが!・・・ったく。
あ、俺はクイナってんだ、職はヒーローね。よろしくねミーナ。あ、俺って言ってるけど俺は女だぞ?」

「相変わらずルーグさんは節操がないというかなんというか…もう少しギルドマスターとして礼儀をわきまえた行動をしてくださいよ…。あ、申し遅れました。私の名前はレインと申します。職はアークメイジ(氷&雷)以後お見知り置きを。」

ルーグと同じように手を差し出す二人。
二人の手を握るミーナ。

「さ…さて、とりあえず自己紹介も済んだようだし…ゲホッ…そろそろ…行こうか、先行させてたもう一人が…ドアを送ってく…ゴホゴホ…るはずだ」

動かなくなっていたルーグがピクピクしながらそう言うと、いきなり何もなかった空間にドアが現れた。
空間接続魔法「ミスティックドア」だ。
ドアが開くと中から女性が現れた。

「やっほー、場所は確保したよルーグさ~ん…ってあれ?なんでルーグさんボロボロになってるんですか~?というか知らない人がいますね~。私の名前はレナ、ビショップだよ、よろしくね~」

レナの差し出す手にまたも握り返すミーナ。

「さて、それじゃあ全員そろったということで、行きますか!」

いつのまにか復活したルーグがそういうと次々とドアの中に入っていくメンバー達。
ずっと黙っていた博もそれに続く。
そんな博に不安そうな顔でミーナが話しかけた。

「ねぇ…博さん?」

「なんだ?」

「あの…私、ビシャスって経験無くて…大丈夫でしょうか、こんな私が行っても?」

「大丈夫だと思うよ。ミーナさんは精いっぱいやれることをやればいいよ。」

行く、と意気込んでいたミーナだったが、いざやるとなるとどうやら気が引けてしまったらしい。
博は、そんなミーナの手を引いた。

「あっ…。」

「ほら、行こう。大丈夫、誰も君を迷惑なんて思ったりしないよ。」

ミーナは博に手をひかれながら、時計塔の深奥に入っていった。





時計塔の深奥に入りルーグが時空のかけらを使うと、光る球体が現れた。

「それじゃみんな、スキルの確認をしてくれ」

ルーグの合図と共にメンバー達は各々のスキルを解放する。
博はその間にちらりとミーナを見る。
まだ、博には彼女が若干緊張しているように見受けられた。

(ここは……俺が守ってあげなくちゃな…。)

ミーナを死なせない。
そんな決意をひそかにし、博は己の武器、「パルチザン」を握りしめた。

「じゃあ始めるよ、お互いに御武運を。」


すべてのスキルを解放した頃を見計らってルーグはそう言うと球体に向かって手裏剣を投げた。
球体が手裏剣によって破壊されると、中から「ビシャスプラント」が現れた。

「はああああああああああああ!!!」

「うおおおおりゃああああああああああ!!!」

「「『ラッシュ』!」」


博とクイナがビシャスプラントに攻撃する暇を与えずに果敢に押し込んでいく。
他のメンバーも彼らに続いて攻撃していく。
だがビシャスもただやられっぱなしでいるわけがなかった。
両手で魔法陣を描くと大量の「ダークスター」を召喚する。

今にも爆発しようとするダークスター達。
しかし

「させませんよ『チェインライトニング』!」

レインから放たれた稲妻が次々と地上のダークスター達を爆発する前に貫いていく。
レナも攻撃こそしないものの援護スキルを唱え続けサポートに徹していた。

(すごい・・・。)

それらの一連の動作を見て、ミーナは思わず畏敬の念を抱いた。
だがそれと同時に、自分の非力さを嘆いていた。
彼女も別に何もしていないわけではなく、今もまさにビシャスに攻撃を加えている。
しかし…どうしても思ってしまうのだ、自分は足手まとい…いや、ここにいる必要性がないのでは、と。

「≠$☆@&◆△&」

ビシャスプラントが何やら呪文を唱えると、その場にいた者すべての動きを一瞬止めた。

「∀@」^Θψ」

さらに追撃するように呪文を唱えるビシャスプラント。
次の瞬間、メンバー全員を透明の剣が貫いた。
ルーグは「フェイク」が発動したためその攻撃から逃れることができた。

「くっ…このタイミングで『セイントソード』とは厄介なことを…!前線のクイナ、レイン、博はいったん下がって!レナさんとミーナさん、早くみんなにヒールを!その間、僕が時間を稼ぐ!」

「は~い」

「はい!」

ルーグの指示の元、各メンバーの回復を急ぐ癒し手達。
だが、その明らかな隙をビシャスプラントは逃さなかった。

「ミーナさん、前!」

ミーナにヒールをかけてもらっていたレインの声にミーナが前を振り向くとそこにはルーグの攻撃の隙を見てミーナに向けて魔法を放とうとしているビシャスプラントがいた。

「あ…。」

よけられない。
そう思い、ミーナは目をつぶった。













いつまでたっても自分への攻撃が来ない。
そのことに気がついたミーナが目をあけると、そこにはビシャスプラントをひたすら攻撃して押し続ける博がいた。
よく見ると博はうっすらとオーラに包まれている。
ダークナイトのパッシブスキル『バーサーク』が発動している証だっただ。

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

あと一撃でも攻撃を食らったらその体は耐えられないのに、それでも博は攻撃の手を緩めない。
ビシャスプラントも予想外の彼の猛攻に反撃することができないようだ。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

博がフィニッシュといわんばかりに槍を突き刺すと、ビシャスプラントは爆発し本体のファントムプラントが現れた。

「ルーグ、今だ!」

「よくやった博!あとは任せろ!『トリプルスロー』!」

丸腰の博に向かって突撃しようとするファントムプラントに向かって次々と手裏剣を投げる。
それらは次々とファントムプラントに突き刺さり、それは博の目の前で光となって消えていった。
それと同時に大量のアイテムが出現する。

「ふーっ、今回はやばかったな」

「ですね、まさかの金縛りからセイントソードへのコンボでしたからね」

アイテムを拾いながらクイナとレインがそれぞれに言う。

「でも、今回は博さんすごかったですよ~。ミーナさんが狙われたあのタイミングでの突撃の時なんて鬼気迫る活躍でしたし~。いつもなら前に出ませんよね~博さん」

抜けてそうで意外と鋭い所を突くレナ。

「お?そうなのか?博~お前そうだったのか~、なかなかお前も隅に置けないやつだな」

ルーグがにやにやしながら博に肩を回す。

「…別に。」

博は面倒臭そうにルーグの肩を払うとアイテムの回収を続けた。

「ま、それはさておきこの後はいつものスキンケアショップに集合ね。それじゃあお先に」

アイテム回収が終わった後は各々で時計塔深奥から出て行った。

(…さて)

博はまだそこにいるミーナに話しかけた。

「どうだった?このギルドのビシャスは」

ミーナはどうやらぼーっとしていたようではっと我に返るとしどろもどろに話した。

「あ…えと、とっても楽しかったです。…というか皆さん強すぎて私なんていなくてもよかった気が…」

だんだん暗くなっていくミーナ。
実際周りにいたギルドメンバーをすごいと思うと同時に、全然役に立てなかった自分をすごくみじめに思っていたからだ。

そんなミーナを見て博はミーナの頭に手をのせる。

「あ~…何でそう考えるかな」

「え…?」

よくわからないといった表情で見上げるミーナに博はそっぽを向きながら続ける。

「いいんだよ、そんなの気にしなくっても。楽しめればそれでいいのさ」

「でも…」

まだミーナは何かを気にしているようだ。
そんな彼女の態度に博は頭に載せていた手を離すと、真剣な表情で聞いた。

「…なんで、そんなに強さに対して執着するの?そりゃ強いに越したことはないけど…それがすべてじゃないんじゃない?」

博の言葉にミーナはうつむく。
だが、何かを決心したように胸の前で手を組むと、まっすぐ博の目を見つめた。

「私……実は過去にあるギルドに入っていたんです。」

ぽつりぽつりと語りだした。

「はじめは、友達同士で組んだ楽しいギルドだったんです。でも、だんだんみんなレベルとか強さを求めるようになって…。私レベル上げとかも本当は苦手で…。しかもほら、私ってどんくさいでしょ?だからボス戦でもあまり役に立てなくて…そのうちギルドのみんなから弱いことに非難を受けて、追放されてしまいました。
今でも、私に博さん以外に友人はいません。
たまに友人になれるかも…と思える人に出会っても、友達登録はいつも断られました。理由はレベルが合わないからだそうです。」

(そういえば…確かにミーナが俺以外の誰かといるのは見かけたことなかったな…。)

博がそんなことを思っている間にもミーナは続ける。

「だから…博さんが初めて一緒に狩った時、私をさりげなく守ってくれた時、その後にも友達登録をしてくれた時はすごくうれしかったんです。
今日、ビシャスに誘ってくれたことも、すっごく嬉しかった。…でも」

ミーナはうつむいて言った。

「私…怖いんです。また前のように…他人に見切りをつけられるのが、それで傷つくのが…たまらなく怖いんです。
今だって、こうして話している今だってあなたに嫌われていないか、おびえている自分がいます。
……嫌いになりましたよね、こんな私なんて。」

ミーナはいつの間にか泣き出している。

(…俺も、似たような経験があったな)

博にはミーナのことが他人事には思えなかった。
弱いという理由で、友達登録を切られたのなんて数えきれない。
弱いゆえに人に必要とされず、弱いゆえに相手にされない。
そんな孤独な生活を送っていた時が、彼にもあったからだ。
彼の場合はそんな彼を救ってくれた人物がいたのだが…。

守ってやりたい、支えてやりたい…。
ずっと一緒にいてあげたい。
そう、思った。

「俺はお前を見限ったりしない。ずっとそばにいてやる」

気がつけば言葉に出ていた。

「…え…?」

まだ泣いているミーナが博を見る。

「…何度も言わせないでくれ、俺が君と一緒にいる。これからずっと。だからもう泣かないで。昔のことなんて、俺が忘れさせよう」

そう言って手を差し出す
よくもまぁこんなセリフがはけるものだと博は思った。
穴があったら入りたいくらいだった。


「…博さん!」

ミーナが博に飛びつく。
博は予想外のミーナの行動に驚くも、しっかりと彼女を受け止めた。

「ミーナ?」

「博さん…私…うれしい…!!」

今度はミーナは笑いながら泣いている。

(泣いたり笑ったり忙しいやつだ…でも)

博は思った。

(こんなに一つ一つ真っ直ぐなやつだからこそ…俺はこいつに惹かれたのかもしれないな…)

腕の中にいるミーナをぎゅっと抱きしめる博。
そして二人はしばらくの間ずっと寄り添いあっていた。
そして、そっと離れると博はミーナに手を差し出した。

「さ、行こう。ほかのやつらが待ってる。」

「はい!」

ミーナが博の手を握り、二人は一緒に歩きだす。
今だけではなく、これからも彼らは一緒に歩いていくことだろう。
きっと…ずっと…。





「この後、彼らは帰ったふりをして一部始終を見ていたルーグ達にからかわれたり、ギルドに入ったのちのミーナと博はとんでもない騒動に巻き込まれていったりすることになるのですが…」

「キラさーん?何やってるんですかー?」

「早くしないと俺達だけで行っちゃうぞ」

「……今行きますよ、博さん、ミーナさん!
…続きは、また別に機会に語ることにしましょうか。
それではみなさん、また御縁があったら逢いましょう。さようなら」




―――― 一人の少年と、孤独な彼女  Fin






蛇足的なあとがき

おはようございますこんにちはこんばんは、額良と申します。
本日は、最後までこの小説を読んでいただき、ありがとうございました。
いまさらながら皆さんもお分かりのようにこの小説はどう考えてもスイーツ(笑)な出来栄えとなっております。
説明不足だし、台本書きだし、展開が急すぎるし典型的だし無駄な登場人物いるしetcetc…。
うまくいかなかった所を挙げればきりがありません。
それもこれも原因は私が締切一週間前に書き始めるという暴挙に出てしまったため、文化祭に間に合わせるためにとにかく急いで書き、遂行を怠ったところにあります。
ですが、何となくやりたかったことの半分は消化できたので自分としてはそれなりに満足してはいます。
今後、私は受験シーズンに入ってしまうので当分小説などは書かない予定ですが、次にもし書くとしたら、もっと書き方の勉強などをして完成度の高いものを書きたいと思っております。

とにかく最後まで読んでくれてありがとうございました。
それでは、また御縁があったら逢いましょう。
                        平成20年10月26日 額良
                        
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30分ほど歩き、奥のほうへ行くと大きな広場に出た。
支部長はそこで止まると振り向いて言った。

「さて、それでは修業を始めるぞ。
ナサはゾンビキノコの討伐じゃ。
2時間くらいでこの近くまできている400頭ほどの群れを討伐しておいてくれ。」

「わかりました。」


一人で400頭はさすがに辛いだろう・・・。

「・・・一人で大丈夫なのか?」

俺は思わず口を出してしまった。
別にナサがどうなろうと知ったことではない…はずなのだが目の前で倒れられるのはなぜか嫌だった。

「辛いくらいが修業にはちょうど良いのじゃよ、ほれもう群れはすぐそこまで来ておるぞ。」

支部長が指差すほうを見ると、ゾンビキノコの大群が土煙をあげて迫って来ていた。
・・・まぁ、危なくなったら支部長が助けるだろうから大丈夫か。


「では、行ってきます。
セインも頑張って下さいね。」

ナサはそう言うと大群に向かって歩き出した。
そして支部長が俺に言った。

「まぁ、見ておれ。
すぐにいらぬ心配じゃったと気付くからのう。」

別に心配だったわけではないんだが・・・。
そうしているうちにも数体のゾンビキノコがナサに襲い掛かる。
だがナサは怯みもせず静かに両手を組んだ。

「・・・『ヒール』!」

ナサの声が洞窟内に響く。
それと同時に飛び掛かっていたゾンビキノコは緑の淡い光に包まれぼろぼろと塵になっていった。
飛び掛かっていた以外のゾンビキノコも何体か消えていた。

俺は正直驚いた。
ナサの『ヒール』の威力、効果範囲、そして効果が及ぶ敵の数が今まで見て来たクレリックとは比べものにならないくらい強く、広く、多かったからだ。

「ナサの『ヒール』の範囲はのう、普通の人間より広いんじゃ。
しかも範囲だけではなく、効果を与えられる対象の数も多いんじゃ。
じゃから、あの程度の群れならそんなに苦にせずともナサなら30分もあれば掃討してしまうじゃろう。
ま、ウォーミングアップのようなものじゃ。」

確かに、見る見るうちにゾンビキノコの数は減っている。

「ゾンビ相手なら早々やられはせんよ、ナサは。
さて主の修業も始めるかの、ほれ」

支部長が俺に向かって長さ60センチくらいの棒を投げてよこした。

「これで何を・・・」

「わしに一撃でも攻撃を当ててみよ。」

・・・今、何と言った?

「・・・は?」

「ゆくぞ。」

支部長はそういったかと思うと持っている杖を振るって来た。
俺は一撃目を防ぐ。

老人にしてはやけに重い一撃だと思った。

だが、防ぎ切れない威力ではない。

俺は支部長の攻撃を防ぎきるとすかさず支部長に向けて棒をふろうとした。
しかし

「がッ・・・!?」

次の瞬間、鈍い音が響いて杖が俺の腹を打ちつけていた。

「ほっほっほ、もしこれが真剣だったらおぬしはこれで一回死んだのう?」

「・・・。」

相手の攻撃は受け流したはずだ。
なら、何故攻撃を喰らった?

答えは簡単、支部長の杖の振りが速く、俺の攻撃が届く前に切り返したからだ。

「ほれほれ、休んでいる暇はないぞい。」

支部長は俺に構わず杖による攻撃を仕掛けてくる。
こっちが防戦一方なのにもかかわらず、支部長の攻撃は確実に俺に当たっている。

「ほっほっほっ、遅いのう。」

「・・・。」

あんな老体のどこからこんなに速く杖を振り回すだけの力が湧き出るのか、疑問だった。
そんなことより、こんな老人に軽くあしらわれているという現実に俺は焦っていた。
こんなことでは・・・俺の目的を達成など・・・できない。

「・・・うおおおおお!!」

俺は支部長の打撃に構わず突進した。
体中を鋭い痛みが襲う。
だが、あと少し、あと少しで攻撃が・・・当たる。





はずだった。

「・・・な・・・・・に・・・!?」

次の瞬間には支部長の棒が俺の腹を思いきり強打していた。

「焦りに己を見失いおるとは、愚か者が。」

薄れていく意識の中で支部長の言葉だけがやけに俺の中に響いていった。


















「・・・イ・・・い」

誰かの声がする・・・。

「セイ・・・・きて・・・・!」

この声は・・・ナサ?

「セイン!起きてください!」

どうやら俺を呼んでいるようだ。
俺は起き上がると回りを見回した。
すぐ横には心配そうな顔をしたナサがいる。

「俺は・・・」

「やっと起きたかの。」

支部長が少し離れたところにいる。

そうか・・・俺、気絶して・・・。

「さて質問じゃ、セイン。


俺が立ち上がるのを見て問い掛ける支部長。

「何故、ぬしがああも圧倒的にやられたか、わかるかの?」

「それは、あなたの攻撃が俺のより速いからです。」

「じゃあ、なんでわしは振りを速くできると思う?」

「それだけの力があるから・・・では?」

「はずれじゃ、ほれ、見てみ。」

支部長は服の袖をまくった。
そこにある腕は、枯れかけた木の枝なように弱々しかった。

「・・・では、何故・・・?」

「マナじゃ。」

・・・どういうことだ?

「わかってないという顔をしておるな?
まぁ、わしはそろそろ支部長としての仕事に行かないとでな、ナサに教えてもらうとよい。
いいかの?ナサ。」

「あ・・・はい。」

「それじゃあの、頑張るがよい。
・・・『テレポ』!」

そういうが早いか、支部長は移動魔法を使って行ってしまった。






「あの・・・セイン?」

あまりの自分自身の情けなさに頭が悶々としていた俺にナサが話し掛けた。

「あ、ああ、何だ?」

「えっと・・・マナの使い方の修業、始めましょうか?」

ああ、そういえば、そんなことを支部長も言っていたな・・・。
そのマナの使い方というものをマスターしないことには、お話にならないようだ。
なら、少しでも速くマスターしてやる。
・・・俺の目的のために。

「ああ、よろしく頼む、ナサ。」

「はい!では、まずは・・・。」

こうして、俺の修業は本当の意味で始まった。









ナサとセインがマナのコントロールの修業を始めて少したったころ、ヨーデルは早くもアリの巣の深奥まで来ていた。

(・・・それにしてもマナをほとんどコントロールできないというに、あれだけの力が出せるとはのう・・・。)

本来、戦士はマナを体の一部分に集約し、その力で瞬間的に筋力の活性化させて戦う。
だから、『パワーストライク』や『スラッシュブラスト』のような威力のあったり、範囲の広かったりする一撃を放つことが出来る。

(・・・将来が楽しみなやつじゃ。じゃが・・・)

ヨーデルはセインの最後のほうに見せた突撃を思い出す。

(・・・何か、よくないものを感じるのう・・・。)

それが何なのか、ヨーデルにはわからなかった。

(・・・まぁ、後であの管理人に聞いてみるかの。
それよりも・・・)

ヨーデルはその場で足を止める。

(・・・本来、ここの周辺にはエビルアイが棲息しているはずなんじゃが・・・)

そこにいるはずのエビルアイは影すら見えない。

そうしているうちに少し地面が揺れてきた。

(・・・来たか)

遠くを見ると、二本足で走る恐竜のような姿をしたモンスターの群れが迫って来ている。

(・・・ドレイクは確かもっと深奥に棲息しておるはずじゃ)

そんなことを考えつつも呪文を唱え始めるヨーデル。それとともに両手を弓を放つかのように構える。

「・・・『ホーリーアロー』」

呪文とともにセインを救ったときのより太い光の矢が放たれ、百はくだらない数のドレイクの群れへと突き刺さり、5体ほどのドレイクを貫く。

(・・・何か・・・・・・何かよくないことが、この洞窟の奥で起きているようじゃのう・・・。)

そして再び矢を放つ。

(・・・それが何なのか突き止めねば、の。)

そう思いながら、ヨーデルは迫ってくるドレイクの群れに矢を放ち続けていた





ヨーデルがドレイク達との戦闘を開始する少し前に、セインはマナのコントロールについてナサの教えを受けていた。



「では、マナのコントロールについて、教えますね。」

「ああ、よろしく頼む。

「まず、マナについて説明しますね。マナは大気中に存在するエネルギー体です。
私達は空気を吸って生きているので、私達の体内にも存在しますね、人によって体に留めておけるマナの量は違いますが。
そして何故かはわかっていませんが、このマナ人の精神の影響を受けやすいです。
このため、私たちは体内に存在するマナを練って消費して魔法を使ったり、身体能力を上昇させることが出来ます。」


「ナサ、一つ質問があるんだが。」

「どうぞ?」

「何故、マナで身体能力を上昇させられるんだ?」

「人によって練られた濃度の高いマナは人の筋肉を活性化させる作用があるからです。
魔法も放つ魔法の波長や軌道を正確にマナにイメージとして練り込むことで使用できます。」

「ということは、これから俺が覚えなければいけないのは練ったマナを体内で使用することだな。」

「そうです。
そのためにはまずマナを練るイメージを保つ練習をしてもらいます。」

・・・どんなイメージをすればいいのかわからない。

「マナを練るイメージ・・・といってもよくわからないのだが」

「そうですね・・・身の回りの空気を身に纏う、そしてそれをどんどん凝縮していく・・・と言えばいいんでしょうか・・・?」

・・・ますますわからない。
「やってみればそのうちわかると思います。」

「・・・わかった。」

こうして、俺の修業は始まった。



――半日後


「・・・そうです、その調子。」

「・・・くっ。」

「あっ・・・それは少し、強引すぎます・・・。」

「・・・こうか?」

「あ、そんな感じです・・・。それじゃ、準備はいいですか?」

「ああ・・・いくぞ。」








「・・・我が内に眠る速さよ、目覚めよ!『ブースター』!」

「いきますよセイン『マジッククロー』!」

俺が呪文を唱え終えるのと同時にナサが天井にある鍾乳洞を砕いた。
鍾乳洞が砕けて次々と大きめの石となり俺に向かって落ちる。

「・・・うおおおぉぉぉぉ!」

俺はさっきの数倍の早さで剣を振り、飛んで来た石を弾いた。

弾いているうちにだんだんと剣を振っている腕が重くなる。
今までは全てここで失敗してしまっている。
ナサはマナのコントロールに何が大切と言っていた?
確か・・・空気を身に纏うイメージ・・・!
頭を整理しイメージを保つ。
腕は、もう重くない。


「はああああああああ!」


そのまま俺は剣を降り続けた。
そして全て弾き終えると最後に俺自身の数倍はある岩石が落ちて来た。
俺はきっと岩を睨むと剣を振り上げた。



「・・・『パワーストライク』!」

俺がいつも使うその技はいつもの数倍の力が込められ、岩を両断した。

「やりましたね、セイン!」

ナサがうれしそうな顔をして駆け寄ってくる。

「・・・あぁ、やっとなんとなく掴めてきたようだ。」


「あとは、持続時間を少しずつ延ばす必要がありますが、これは少しずつやるのが一番いいと思います。」

「わかった。」

「それにしても習得が早かったですね、普通はもう少しかかるものですが・・・。」

それはおそらく、ナサのおかげだと思う。
何故なら、修業中に俺の細かなイメージの乱れをその都度感じ取り、指摘してくれたからだ。
もし、あれがなければ俺はまだ正確なイメージを保てなかっただろう。

というか、こんな風に、いわゆる「普通に」人に接してもらうのは、初めてだった。


「・・・ナサのおかげだ、ありがとう。」

自然と、普段なら言わない感謝の言葉を、俺は口にしていた。

「いえいえ、どういたしまして。」

笑顔で答えるナサ。
何故だろう。
それを見ただけでこの安心感というか高揚感というかよくわからないものが込み上げてくる。

・・・今の俺は・・・・おかしい・・・。

だがナサはそんな自分の内側の変化に戸惑っていた俺にかまわずに言った。

「さて、もう夕方ですし、そろそろスリーピーウッドに帰りましょうか?」

「・・・あぁ。」


俺は突然自分の中に生まれたこの説明のつかない感覚に悶々としながらも、ナサと共に帰路につくのだった。


--その日の夜

「・・・どうやら、寝たようじゃの」

一日の修業を終え、くたくたになって帰って来たナサとセインが寝たのを見届けたヨーデルは静かに家を出た。
そして歩きながら話し出す。

「セインは思った通り見所のある男じゃのう。
早くも『ブースター』を習得するとは」

誰に話し掛けているわけでもない、だがヨーデルは話続ける。

「・・・まぁ、今まではマナの鍛練をしていなかっただけで、体の鍛練は出来ていたから当然といえば当然かのう。
強さという面では心配なさそうじゃが・・・。」

ヨーデルは顔を少ししかめる。

「・・・何かこう・・・あやつからは暗いものを時々感じるんじゃ。」

ふう、とため息のようなものをついてヨーデルは足を止める。

「まぁ、そういうわけじゃから、あいつについての組織にある情報全てを教えてもらえないかの?」

ヨーデルが後ろを振り返り、何もないはずの空間を見つめる。

「・・・何で誰もいないところでしゃべってるのかえ。」

ヨーデルとは別の声がした。

「そりゃあ、お主がいることがわかっているからのう。」

「ちっ。
『ダークサイト』解除」


舌打ちが聞こえるとそこに支部管理人の姿が現れた。
(ちなみにダークサイトとは自分の姿を消すことの出来る魔法である。)



「おうおうそんな老婆の姿などしおって。
わしの前でくらい普通にしておれ「タバサ」よ」

「なら失礼」

管理人は髪の毛と顔を掴むとそれを取り、自身を覆っていたローブを脱いだ。
現れたのは背筋を伸ばした二十代半ばの凜とした黒髪の女性。
背はだいたい170cmぐらいだろうか。

「ふー、やはりこっちの姿の方が楽でいい。」

「ならば老婆の姿など取らなくてよかろうに。」

「有事の際に老婆の方が何かと便利なのさ。
戦闘の時も相手の油断を誘えるしな。」

「それは『ジパング』特有の教えかの?」


「ああ、そういうことだ。」

「ふむ、まぁそれはともかくさっきのことを教えてもらえないかの?」

「ああ、セイン・カヴェラのことだったな。やつには―――」

タバサはセインについて語る。
聞いているヨーデルはというと何やら神妙な顔をしている。

「――と、いうわけなんだ。」

「ふむ・・・そうか、やつがあの・・・。組織の一部の者にとってはこの上なく煙たいじゃろうなぁ・・・。
マナな鍛練をしていなかったのにも納得がいく。
今まですべて自分だけで鍛練していたのじゃから。」

「じゃなければあんなに優秀な男がマナのコントロールを出来ぬはずがないだろう。」

「ふぅむ・・・。」

ヨーデルが顎に手をあて考える。

「まぁ、何はともあれあんな逸材を野に埋もれさせるのは勿体ない。
育ててやれよ、身も心も。」

少しの間、その場は沈黙する。

「どうしたヨーデル、セインについて何か考えるところでもあるのか?」

タバサの問いにしばらく沈黙していたヨーデルが口を開く

「・・・いや、境遇がナサに似ておるな、と思っての」

「そうか、ナサも・・・」

そこでヨーデルは片手をあげてタバサの話を中断させる。

「よい、まぁそれはなんとでもなるとして。
そんなことよりも話すべきことがある。」

「なんだ、まだあるのか?
そろそろ私は寝たいんだが。」

眠たそうに欠伸をするタバサに対し、ヨーデルは真剣な顔で続ける。


「・・・近頃のスリーピーウッドの周辺のことじゃ。」

「!」

タバサの今までの顔付きが一瞬で変わった。

「今日、アリの巣の奥の方で、深奥に棲息するはずのドレイクの群れと出会った。
おかしいと思ったわしはさらに奥に進むと焚火の後を見つけた。それも複数」

「・・・私のところにはそんなところに行けという組織からの依頼は来てないぞ」

「任務外でそんなところに行くやつもいまい。」

「・・・ということは」

「何者かが侵入した、ということじゃな。」

「だが何のために?あそこには何もないぞ。」

タバサは本当にわからない、といった感じの顔をしている。

「神殿がある。」

「!」

タバサはヨーデルの言葉で全てを把握した。
そんなタバサを見てヨーデルは続ける。

「・・・スリーピーウッドの戦力を強化しておいたほうがいいかも知れぬ」

「わかった、中央のやつらに申請しておこう。
あまり期待は出来ないが・・・な。」

そう、ここはほとんど警戒する必要はないだろうと楽観視されている場所なのである。

「ここにいる者達を鍛えればいいんじゃろうがなぁ・・・。」

「無理だ、ここにいるのはもうピークを過ぎたか、左遷されてやる気がない者達しかいない。」

「期待できるのはあの二人だけ・・・か。」

だが、それだけではこれから起こるかもしれないことに対処できないだろう、とヨーデルは思った。

「では、私は行くぞ」

「うむ、夜遅くにすまなかったの」

タバサは老婆の変装を再びすると闇に溶け込むように消えていった。

「・・・やれやれ、これから先、難儀じゃのう・・・。」

己をとりまく事柄の複雑さに、思わずため息を着いてしまうヨーデルであった。


―――ここは、どこだ。

目を覚ますとそこはベッドの上だった。

パチパチと薪が燃える音がする。

(俺・・・気絶して・・・)

数々の光の前にあれだけの数のゾンビママシュが消えていったところまでは覚えている。
どうやら俺はあの後助けられたらしい。

だんだんはっきりしてきた視界で辺りを見回してみると、暗い。
どうやら今は夜のようだ。

「やっと起きたようじゃな?」

声のするほうを見ると一人の老人が暖炉の前で椅子に座っていた。

「・・・お前は誰だ?」

「わしか?
わしはヨーデル・ゼルフォン。

スリーピーウッドの支部を任されている者じゃ。」

老人の答えに俺は驚いた。
そしてすぐに起き上がるとその場で頭を下げた。

「・・・知らずとはいえ、非礼をお許しください。」

「ほっほっほ、別にかまわん。
あんまり固くされるとわしの方が疲れるでな?
気楽にやってくれりゃええ。」

そして支部長は話を続ける。

「それはそうと、お主には礼をいわねばならぬ。」

「?」

俺は何も礼を言われることをした覚えがないので、困惑した。

「我が弟子、ナサを助けてくれたじゃろう?」

そこで俺は大事なことを忘れていたことに気がついた。

「そうだ、彼女は?」

「無事じゃよ、怪我もほとんどないといってもよい。
というかそこで寝ておるよ。」

支部長の指差すほうを見るとそこには小さな寝息を立てているティシフォンさんがいた。
それを見て、俺は安心した。

「さっきまで先刻の一部始終をナサから聞いていたでな。
主はなかなか見所がある者じゃのう。
普通、自分の命が危機にさらされれば何にも構わず逃げだすものだがのう・・・。」

それは俺にはもう失う物などないからだ。
次々と話す支部長。
俺はついていけなかったので黙っていた。

「それにしても主、無口じゃのう・・・もう少し気楽にせい。」

「いえ、これが普通です。」

「ふむ・・・まぁそれもよいか。」

支部長は何に納得したのかうんうんと頷いていた。






「師匠・・・・・・どなたと話しているのですか・・・?
そろそろ寝られた方が・・・。」

支部長の話す声が大きかったのだろうか、ティシフォンさんが眠そうな目をして起きてきた。


「あ・・・カヴェラさん!起きたんですね!!」

俺を見るなり彼女はぱっちりと目を開けてこちらへ来た。

「ほっほっほ、さて年寄りはここらで寝るとしようかのう。
今後のことはナサから聞いておくれ、話をしてあるからの。」

そういって支部長は部屋を出ていった。

・・・困った、俺は女と話すのは苦手なんだが・・・。

だがそんな俺に構わず彼女は話す。

「先刻は助けていただいて本当にありがとうございました。
私はもうだめかと思ってました。」

「・・・ああ。」

「それにしても起きることが出来て本当によかったです。」

「・・・・・・ああ。」

俺はどう接していいものかわからず、ただ相槌をうつことしかできなかった。
そんな俺に不満だったのだろうか、彼女は少し悲しそうな顔をして言った。


「・・・無口、なんですね。」

いや・・・別にそういうわけじゃ・・・・・・・いや、そうかもしれない。

「すまない、ティシフォンさん」

そして俺は頭を下げた。
そんな俺に彼女は苦笑した。

「別に謝ることじゃないですよ?
あ、それと私のことはナサと呼んでください」

「わかった、ティシフォンさ・・・」

「ナサです。」

「ナサさん。」

「・・・。」

彼女は何やら不機嫌そうな顔をしている。
・・・女は・・・よくわからないな・・・。






「・・・ナサ。」

「・・・やっとわかってくれましたか。
今後一緒に任務につくこともあるかも知れません、その時はよろしくお願いします、カヴェラさん」

「・・・セインだ。」

「?」

「俺の呼び方は、セインでいい。」

「わかりました、セイン」

とりあえず一通りの挨拶のようなものを終えた。

「ところで、ナサ。」

「はい?」

「俺が今後寝泊まりする場所はどこなんだ?」

「えっと・・・そういえばどこなんでしょう?
すみませんが知りません。」

「お、大事なことを言い忘れておった。」

ナサが困った顔をしているところにいきなりヨーデルが顔を出した。

「セイン、お主にはこれからナサと一緒にその部屋で生活してもらうからの」

・・・ちょっと待て!!!

「ちょっと待て支部長、流石にそれは・・・」

「ふむ、やっと敬語が取れたのう。」

「いや、茶化さないでください。」

「ん?
女と一緒の部屋だと何か良からぬことでも主はするのかの?」

「いや・・・それはしないが・・・・・・。」

「なら問題なかろう、じゃあそういうことでな。」

まさに問答無用、ヨーデルはそのまま自室へと行ってしまった。
どうするんだ・・・この状況。





「・・・ナサ。」

「はい?」

「君はさっき支部長の言っていたことに反論しなかったが・・・いやじゃないのか?」

「何がです?」

「いや、俺が君と同じ部屋で寝泊まりすることが、だ。」

「いえ、あまり気にしませんけど・・・。」

「いや・・・普通は気にす・・・」

「セインは・・・」

ナサは俺の言葉を遮り言った。

「私と同じ部屋だということは、嫌なのですか?」

悲しそうな顔をする彼女。なんだかこちらが言っていることが悪いことのような雰囲気だ。
俺は間違っていない・・・はずなんだが・・・。

「いや、そうではなく。
昨日今日会った程度の者をそんなに近しい所に置いていいのか、ということだ。
支部長の目を盗んで何かされるかもしれない、とかは思わないのか?」

関を切ったように溢れ出す俺の言葉にナサは微笑んでいる。
そして言った。

「あなたはそういった類の人間ではないと、私は思っています。
だから、私にはあなたが近しい所にいることに何の問題もありません。」

・・・なんでこいつは、そんなに他人を信用できるんだ。

「さ、もう夜も遅いですし寝ましょう。」

そう言ってナサは自分のベッドに入った。

「それじゃあ、おやすみなさい」

ナサはそれだけ言うとすぐに寝息をたてはじめた。

俺はナサのどこまでも無防備な行動に呆然としていて、暫くそのまま突っ立っていた。
だが、我に帰るといつまでもそうしているわけにも行かないので俺ももう片方のベッドに入り目をつぶった。


・・・だが、頭の中が悶々としていて眠れない。
長い夜になりそうだった。



――――
――








・・・結局眠ることはできず、朝が来た。
眠れなかったにも関わらず全然体に疲れは感じないから、問題はないのだが。

すぐ隣(と、いっても3メートルは離れているが)ではナサは小さな寝息を立てている。

さっきまでどたばたとした状況だったせいで気がつかなかったが、あらためて見るとナサは調った顔をしている。

これだと襲おうとする輩もいるのかもしれないな、とふと思った。
無論、だからといってそれは許されることではないが。

俺はベッドから起き上がると壁に立て掛けてある剣を取り、ナサを起こさぬように気をつけながら部屋を出た。





支部長の家をでると、その眼下にはスリーピーウッドの静かで壮大な風景が広がっていた。
どうやら、ここはかなり高いところに位置するようだ。
ここからは先刻行ったアリの巣ダンジョンの入口も見える。

俺は朝の新鮮な空気を吸うと、剣を握り素振りを始めた。
静寂で満ちていたその場に剣が空を切る無機質な音が響く。
俺は無心で剣を振り続けた。

「なかなか熱心じゃのぉ。」
2000回くらい振り終わったところだろうか、いつの間にか支部長が後ろに立っていた。
支部長は軽く笑みを浮かべながらこちらを見ている。

俺は無視し、無心で剣を振り続けた。
そんな俺にかまわず支部長は話しかけてくる。

「ちょっと前まで瀕死だったんじゃ、少しくらい休んでもいいんじゃないかの?」

俺は剣を振りながら答えた。

「いえ、その時あなたが助けてくれなかったら、俺は死んでいた。
俺は、もっと強くならなければいけない。」

「ほう・・・。」

支部長は少し考え込むように顎を撫でると、少し間を置いて聞いた。

「お主は、何故強さを求む?」

俺はそう聞く支部長からさっきまでとは明らかに違う空気を感じ、剣を振るのをやめた。
顔はさっきと同じ軽い笑みを浮かべている。
しかし、目は笑っていない。
その場の空気が張り詰めていくのを感じた。

「・・・生きるため、そして自分が戦いの中で死なないために、です。」

嘘だ。

「ほう・・・。」

支部長は俺の答えを聞いてまた考え込むように髭をなどている。

「ふむ、ならば・・・」

少しの間を置いて支部長は俺に言った。

「わしが修業させてやろう!」

・・・この人は何を言っているんだ?

「そうと決まったらさっさと朝食をすませるぞい!
ほれ、早く家へ入れ。」

「いえ・・・それよりもこちらのレジスタンス支部に勤務している方々に挨拶を・・・。」

「挨拶などいつでも出来る。
とにかく今日、主はわしと修業する。よいな?」

そう言って支部長は何やら張り切って先に家の中へ入ってしまった。
・・・どうも、ここに来てから調子が狂うことばかりだ、と思った。




「あ、おはようございます、セイン」

家の中へ入るとナサが起きていて朝食の支度をしていた。
テーブルの上にパンとハムエッグが用意され、野菜のスープが湯気を立てていた。

「ナサ、わしとセインはこのあと午前は稽古をすることにした。
お前はどうする?」

「ん~・・・では、私もご一緒させてください。」

「よかろう、ではさっさと食べてしまおうかの。」

そう言って席に着くと言葉通りさっさと食べ始めた。
俺もいただくとしようか。

「・・・いただきます。」

「はい、どうぞ。」


ハムエッグを頬張ると、口のなかで半熟の黄身が広がる。
野菜のスープは決して薄口ではないが、あっさりとしていて口辺りが良い。
基本的に味気ないものばかり食べている俺にはこの朝食がとてもおいしく感じた。
いや、ナサの料理が上手だからなのかもしれないが。
そんな事を思っているうちに食べ終わった。

「さて、稽古にいくかの。
30分後にアリの巣の入口で待っておるぞ。」

支部長はそういうと足早に家を出ていった。

「片付けは私がやっておきますから、セインは先に準備をしておいてください。」

「いや、それでは君が・・・」

「私はクレリックです。
杖さえあれば他に準備もありませんので」

ナサは微笑んでそう言うと食器を持って台所へ行ってしまった。

仕方がない、俺は準備を始めるとしよう。





10分後、準備を終えた俺とナサは家を出た。

アリの巣の入口まで少し距離があるので、着くまでの間、俺はナサにスリーピーウッドについて聞くことにした。

「ナサ」

「はい?」

「ここのレジスタンス支部にはどれくらい人がいるんだ?」

「大体二十人くらいですかね~・・・ほとんどの人が三十過ぎた男性で、女は私しかいません。」

かなり少ないな・・・他の支部には軽く千~二千人はいるのだが・・・・・・。


「少ないでしょう?
ここはそれだけ重要視されていない、ということなんだと思います。
強力なモンスターと言ってもゾンビママシュくらいしかいないと聞いてますし。」

「ふむ・・・。」

まぁ、俺が飛ばされたくらいの場所だから当然といえば当然か。

「だから、私と同じくらいの年齢の方が誰もいなかったので、セインが来てくれて私はうれしかったです!」

「・・・そうか。」

「そういえば、セインは何歳なんですか?」

「16だ。」

「あ、なら私と同じですね。
でも意外です、もっと年上だと思っていました。
前はどこにいたんですか?」

いつの間にか質問される側になってしまった。
だが、俺は過去について語る気は絶対になかった。

「ナサ」

「はい?」

「アリの巣の入口についたぞ。」

「え?あ、そうですね・・・。」

ちょうど着いたのを口実に俺は話をはぐらかした。
ナサは俺のはぐらかし方に違和感を感じたのだろうか、顔に疑問の色を浮かべている。

「おーい!何をしておる、もう10分も遅れておるぞ、はようせい!!」

そんな俺達に構わず、そこにいた支部長が大声で呼ぶ。
俺達は急いで支部長のところへ行った。

「まったく、若い者同士いろいろ話したいことがあるのはわかるが、時間は守れい。」

いや・・・別にそういうわけじゃ・・・。

ナサのほうを見ると反省しているのか少ししゅんとしている。

「まぁええ。さ、行くかの。」

支部長はそう言うと、早足で洞窟の中へ入って行き、俺達もそれに続いた。

俺はとっさに盾で防御した。
しかし、まともに受けたゾンビママシュのタックルの衝撃にただの鉄製の盾は堪えられず、音を立てて砕け散った。
俺はそのまま吹っ飛ばされ壁に激突した。

体は痛むがすぐに追い打ちがくると思い、俺は立ち上がると両手で剣を構え直した。
こちらなら、少しは斬撃の威力も上がるはずだ。

しかし、そんな俺が目にしたのは何故か悶えるゾンビママシュだった。

(今までどんなに切ってもなんともなかったやつが・・・札を攻撃されたとたんに悶えている・・・?
・・・まさか・・・。)

意を決して俺はもう一度やつの札に切り掛かると、やつはその部分を庇うように他の部分で防御した。

(間違いない、やつの弱点はあの札だ!)

俺はすぐにゾンビママシュから離れると、周りの地形を確認した。
見ると、尖った鍾乳洞が突き出た壁がある。


(よし、あそこに激突させれば隙を作ることができるはずだ!)


ゾンビママシュを見るとやつはすでにこちらへ突撃しようとしていた。
俺は全力で壁の方向へ駆け出した。

「ウガァァァァァ!!!」

咆哮が聞こえ、後ろを見るとすでにゾンビママシュは俺に向かって突撃していた。
やつの足に当たる部分は地面についていない。
俺に最速でタックルするために地面に対して平行に跳びはねたのだ。


(今だ!!)

次の瞬間、俺は左へ向かって飛びのいた。
すでに地面から離れ、飛んでいたゾンビママシュはいきなり方向転換を出来るはずもなく、俺の目論見通り鍾乳洞の突き出た壁に激突した。
ものすごい轟音とともに土煙が巻き起こる。
やつは土煙で視界がきかない、チャンスだ。

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

俺はゾンビママシュに向けて跳躍した。
音に反応したのかやつがこちらを向く。
だが、もう遅い。

「『パワーストライク』!!!!」

俺の渾身の力を込めた一撃がゾンビママシュの札を切り裂いた!!




















・・・はずだった。

(そんな馬鹿な!?)

剣は札の半分程の部分で止まっていた。
さらに悪いことに、ゾンビママシュに刺さっている剣が深く入ったせいで抜けなかった。

「ウガァァァァァァ!!!!」

ゾンビママシュが再び暴れ出す。
ここで剣を離したら、確実にやられる。
俺はゾンビママシュに振り回されながらも必死で剣にしがみついた。

(あと・・・一撃・・・・・・あと、一撃で終わる)

ここで自分が死ねば、次は離れたところに横たわっているティシフォンさんに襲い掛かるだろう。

思い出したくない、過去の似たような映像が俺の脳裏に蘇る。

(だめだ、それだけは絶対に・・・)

俺は剣の柄を握りしめた。


「させるものか!!『EXアタック』!!」



気がつくと叫んでいた。
次の瞬間、どこから湧いてきたのかわからないがいつもの数倍の力を感じた。
俺は刺さっていた剣をゾンビママシュの体から抜き、目にも止まらぬ速さでさっきの再び『パワーストライク』を繰り出していた。
そしてゾンビママシュの体ごと札を切り裂いた!!


「ガ・・・ァ・・・ァァ・・・」


ゾンビママシュはその場に倒れると、札のあった部分から黒い煙を吐き出しながら急激に腐り始めた。

(・・・なんとか生き延びた、か)

俺はその場にへたりこみ、そんな事を思っていた。
そしてふとティシフォンさんの事を思い出し、彼女の側まで行き顔色を伺った。
どうやら、先程より状態は良いようだ。
だが、いつまでもそうしているわけにもいかないので俺は彼女を背負い、スリーピーウッドに戻ろうとした。

しかしその時、おれたちの目の前に何かが落ちてきた。

(!!・・・・・・まさか・・・)

土煙でよく見えないがあの巨大なシルエットは間違いなくゾンビママシュ。

今まともに戦ったら間違いなく死ぬ。
かといってティシフォンさんを背負ったまま逃げ切れるとは思えない。
そう考えた俺はティシフォンさんをその場にそっと横たえると、さっきゾンビママシュを倒したときと同じように札を狙って、切り掛かった。

「『パワーストライク』!!」

倒せずとも札を攻撃すれば少しは逃げる隙が出来るだろうと踏んだからだ。

だが、その考えは甘かった。

「ヴァ゛ァァァァ!!!」

「なっ・・・ぐっ!!」


俺は何かによる横からの攻撃をもろに受けてしまい、ティシフォンさんの横たわっている方へ吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばされているさなかで、俺に攻撃した何かを見た。

(・・・万事休す・・・だな。)

俺の目線の先にいたのは五体のゾンビママシュだった。

(早く・・・逃げなければ・・・。)


俺はすぐさま体を起こそうとした。
しかし

(体が・・・うごかな・・・い?)
起きようとする俺の意志とは裏腹に、体が全く動かなかった。
おそらく、今まで蓄積されたダメージに体が耐えられなくなったのだろう。

そんな俺に構わず、ゾンビママシュ達は近寄ってくる。

(・・・俺はやられても・・・・・・ティシフォンさんだけは・・・!)

俺はティシフォンさんを庇うように体を置くとゾンビママシュ達を睨んだ。

そうしているうちに五体の中の一体が飛び上がった。
そして俺達目掛けて落ちてきた。

(・・・結局俺は誰も守れない・・・か。)

ゾンビママシュの巨体が迫ってくる。

俺は自責の念に駆られながらも、死を覚悟して目を閉じた。






おかしい、いつまでたってもやってくるはずの死が訪れない。

そう思い、目を開けた俺の前には何かの光によって消え去るゾンビママシュの姿があった。

「光の翼よ、その浄き輝きで邪を焼き尽くせ!『シャイニング・レイ』!」

そして何者かによる呪文の詠唱が聞こえたかと思うとゾンビママシュ達が次々に放たれた光に消し去られていく。

「やれやれ、老体にこの仕事は堪えるわい。」

魔法を放った人物はそう呟くとこちらに近づいてきた。
口調と風貌を見たところ、どうやら老人のようだ。

「大丈夫かの?」

俺に手を差し延べてくる老人。
俺は手をとろうとした。
だが体は動かず、俺の意識は闇に落ちていった。

吹き飛ばされた直後、俺は彼女へダメージがいかないように何とか背中から着地した。

「大丈夫か?」

「ええ、おかげさまで。でもあれは一体・・・?」

幸いなことにお互い大きな怪我はないようだ。
さっきまで俺達がいた場所を見ると、砂埃が巻きあがっていた。
そしてその中心には、巨大な何かがいた。

「ヴァ゛ァァァァ!!」

咆哮をあげるその何かは砂埃が止むにつれてゆっくりとその巨大な姿を現して来た。
ゾンビキノコの親玉、ゾンビママシュだ。

「そんな・・・何でこんなところに!?」

ティシフォンさんの驚きと恐怖が入り交じったような声が聞こえた。
無理はない、本来はもっとアリの巣の深奥にいるはずのモンスターだ。
普段なら何とかなるかもしれないが、今の消耗しきった俺達ではおそらく敵わないだろう。

「逃げるぞ」

俺はそう言うと彼女の手をとり後ろに走り出した。

しかし

「ヴァ゛ァ゛ァァァ!!!!」

ゾンビママシュは咆哮を上げながら跳びはね、衝撃破を起こした。
そして、俺達は身を庇う暇もなくまたふっとばされてしまった。







俺は壁に衝突した。
その後、痛む体に鞭を打って立ち上がると、ティシフォンさんのところへ駆け寄った。

「大丈夫か?」

「・・・・・・。」

彼女は返事をせず、ぐったりしている。
呼吸はしているから死んではいないだろう。
頭から少し血が出ているのを見たところ、頭をうって気絶してしまったようだ。
だが、これで逃げるわけには行かなくなった。

俺は持っていた回復薬をすばやく彼女に飲ませると、立ち上がってゾンビママシュのほうを向いた。

「ヴァ゛ァァァァアアアアア!!!!」

やつも、こちらを向いている。
このまま突っ込んでこられたら、俺は避けられても気絶しているティシフォンさんは押し潰されて死ぬ。
それだけは、させるわけにはいかない。
俺のとるべき行動は一つだった。

「俺はこっちだ『パワーストライク』!!!!」

俺はティシフォンさんが横たわっている場所から離れつつ、いつもの『パワーストライク』を叩き込んだ。

今の俺の中での最大の斬撃がゾンビママシュの体を切り裂く。
だが、それはやつの体に大きな切り込みを残しただけだった。
やつが平然としているところを見ると、どうやらあまりダメージになっていないようだ。

「ヴガァァァァァ!!!!」

剣を抜くときにできた隙を突き、やつは俺を弾き飛ばし、押し潰そうと跳びはねながら攻撃してきた。
今のところはまだ大きなダメージを負っていないが、このままでは確実に俺は追い詰められて死ぬ。
そうなる前に、何か手を打たなければいけなかった。

(何かないのか・・・やつの弱点は・・・!)

俺は必死でやつを倒す方法を考える。

(ゾンビママシュは・・・死体だから物理的な攻撃で倒すには、動けなくなるほど切り刻むしかない。
だが、今俺のにはそれは無理だ。
弱点は聖か癒属性の魔法・・・だめだ、使い手がいない。)

そうしている間にもやつは攻撃の手を緩める事なく俺に襲い掛かってくる。

「・・・くそッ!!『パワーストライク』!」

結局何も打開策が浮かばず、俺はやけくそ気味にゾンビママシュに思いきり剣を降った。
俺の剣はたまたまゾンビママシュの札の部分に当たった。
しかし

ガキンッ!!

(な・・・札が・・・硬い!?)

鈍い音と共に剣は弾き返された。

「ガァァァァァ!!」

弾き返された隙を狙ってゾンビママシュが俺に牙を剥き出して突っ込んできた!!

 
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